{今週のお題:心を動かされた映画}女同志の友情と愛と死と…「哀愁」

哀愁 [DVD]

原題 : Waterloo Bridge(194O)
製作年 : 1940年
製作国 : アメリ

キャスト:
ヴィヴィアン・リー
ロバート・テイラー
ヴァージニア・フィールド 他

ウォータールー橋。
ロイ・クローニン大佐(ロバート・テイラー)がマイラ(ヴィヴィアン・リー)に
出会った場所だ。

第一次世界大戦下、サイレンの鳴る橋の上で落し物(私の記憶が正しければビリケンさん!?)をしたマイラを助け、一緒に避難所に逃げ込んだ。一目惚れだった。
彼女はバレエ団のダンサーだった。食事に誘ったが、バレエ団は許さなかった。
しかし、彼女はキティー(ヴァージニア・フィールド)の助けでどうにか会うことができ、翌日、結婚を申し込んだ。

しかし、ロイのもとに召集令状が届き、戦地へ赴くことになる。
マイラは何とかロイを見送るために仕事を抜けるが、彼の姿を遠目に見送ることしかできなかった。
そしてマイラは仕事に穴をあけたと、バレエ団をクビになり、キティーも彼女と共にバレエ団を去る。

ある時、ふと見た新聞に「クローニン大佐殉死」の記事を見つける。
卒倒し体調を崩すマイラ。彼女のためキティーは体を売り、収入を得ていた。
全快して初めてその事実を知ったマイラは、彼女の友情に胸を打たれる。
そして生活のため、マイラもまた夜の女へと身を落としていった。

それから1年後、ロイはウォータールー橋でマイラと再会する。
「クローニン大佐殉死」は誤報だったのだ。

ロイと幸せになりたいと思う傍ら、娼婦にまで身を落とした自分のことを考えると、マイラは彼の前から消えるしかなかった。
思いつめたマイラはトラックに身を投げ、最期を遂げる。


何の見返りもないと知りつつ、病気の友達を看病し、彼女のために体を売ったキティー
バレエのダンサーでもあった彼女はマイラと共にバレエ団を辞めることになったわけだが、ずっと続けていたことをそうもあっさり捨てられるのか…。
考えれば考えるほど、キティーの行動はなぞだが、そこには理屈では割り切れないものがあったのかもしれない。
無償の愛、あるいは良心。
正しいと思ったことをする、困っている人を見たら助ける
…彼女はこの当たり前の行動を行っただけなのだが、これがいかに難しいか…。

何が正しいかわかっているけど勇気を出せないとき、いつも彼女を思いだします。
彼女なら躊躇なく正しいことを選ぶだろう、と。

映画や文学の中にいる人生の指南役たちのおかげで、迷った時はいつも
自分らしい選択ができている気がします。

でも個人的には最後はきちんとマイラとロイに結婚してほしかった!
…と思うあたりがまだまだですね。


{おまけ}
実はこの作品、「ウォタルウ橋」(1931年)のリメイクなんです。
でもかなり内容が違っているような…(^_^;)
マイラはダンサーではなくコーラスガールで、ロイと出会った時にはすでに娼婦に身を落としていたり、最期は自殺ではなく爆撃されたり……。

この作品はいろんな人にインスピレーションを与えてきました。
日本でも「真知子巻き」で有名な「君の名は」の元ネタなんです。(ってわかります?!)
ウォータールー橋を数奇屋橋に置き換え、マイラは真知子。ロイは春樹。
そしてすれ違いが続き、いつしか真知子は人妻に。
主人公を娼婦にでしなかったあたりは日本のお国柄が出てて非常にいいな、と思いました。
人妻も娼婦も好きでもない男も抱かれているので、後ろめたさは同じ。

忘却とは忘れ去ることなり 忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ
(ラジオドラマだったころの冒頭のナレーションより)