天才ダ・ヴィンチのトホホな試み 〜最後の晩餐1〜

かの有名なダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。
他のフレスコ画に比べて少々損傷が激しすぎると思いませんか?

実はこれ、当時のフレスコ画の書き方とは全く違った方法で描かれたからなんです。


一般的なフレスコ画は一旦壁をはがして新たに漆喰を塗り、それが乾かないうちに絵を描いていきます。
だからフレスコ(英語で言うFRESH)なんです。

実際、「最後の晩餐」の向かいには十字架に架けられたキリストの絵がフレスコ画で描かれているのですが、状態が全然違います。


ダ・ヴィンチの用いた方法は、まず壁をはがさずに、そこにマグネシウムやカルシウムを塗りつけます。
そして完全に乾いてから絵を描いたようです。

こうすることでフレスコ画とは違い、じっくり絵を描くことができました。
そして色の発色も大変鮮やかです。


しかし、この絵は修道院の食堂で、壁の裏には厨房があります。
そう、湿気がほかよりひどい!

何と完成から20年ほどで腐りはじめたとか。
もちろん、ダ・ヴィンチの存命中だったので、何度も修復を試みましたが、全然ダメでした。
そのうち「でかいしみ」とか呼ばれるようになって、修道院もドア大きくしたいから、とか言ってキリストの足の部分を切り取ったり、10回以上修復されるうちに、ユダの顔とかかなり違うものになっていったり、手がパンにされた弟子がいたり…とだんだん原型からかけ離れていき、もうとても名画とは思えない扱いを受けてきました。


じっくり絵を描きたかったのも、発色を鮮やかにしたかったのもわかります。
でもダ・ヴィンチが伝統的な技法で描いていたら、もっと美しいまま保存され、大切にされていたと思います!

うん、この絵を台無しにしたのは、湿気でも後の修復者でもなく、ダ・ヴィンチ自身だったんじゃないかな。