あらゆる角度から真実をえぐりだす画家 〜山下 菊二〜

スペインのシュールレアリスト、ダリのことを書いたので、今回は日本のシュールレアリストを。

※グロ注意。

山下 菊二(1919年-1986年)。
くわしくはこちらをどうぞ。

捕虜が逃走し、囚われて連れ戻された時のことです。
その処刑が私たち新兵の度胸試しによって、執行されることになりました。
手足を縛られた逃亡者の首から下の部分は、穴の中に土と共に突き固められて、首だけが地上にぽつんと置かれたように見られた。
その頭から鼻を、そして耳を、刀のようによく切れる兵器用シャベルでこの手で切り落とさなければならないんだと思うだけで、体内から消えていく気力とは反対に、シャベルは打ち下ろされていた。
首の上に石油が振りかけられて、火がつけられ、よくもこのような酷いことができたものだ、という血のりで覆われた大地の声に対して、あの絶対的な軍隊では仕方なくやらざるを得なかった。
そのような言い訳が、あの多くの中国人の死の苦しみを傍観した私にとって、何になるというのだ。
そういうことがどうしようもない侮辱となり、いわば十字架のようなものとして内在化しました。
               「裂かれた戦場に憑く」より



同じシュールレアリストではありながら、ダリは自分の中にあるものを絵にしてきましたが、山下菊二の作品はルポルタージュ絵画運動と呼ばれ、外部から入ってきた情報を自分の作品として描いていました。
有名なのは曙事件を題材とした「あけぼの村物語」でしょう。


自分が加害者であり、被害者でもあるという戦争体験を経て、自分の中に内在する矛盾があるからこそ、画家・山下菊二になり得たのだと思います。