貧困街を救ったキリスト 〜「十字架の聖ヨハネのキリスト」ダリ〜
「聖ヨハネ」って何?
「十字架のキリスト」でいいのでは?
そんなツッコミがありそうなんで、まずその説明から。
実は聖ヨハネという人は結構いっぱいいます。それを区別するために「使徒〜」とか「洗礼者〜」と呼ばれています。
では、「十字架の聖ヨハネ」とは誰か。
彼は聖書の中の人物ではなく、16世紀のスペイン人。
彼が「十字架の〜」と呼ばれるようになったのは、ある夜、窓の外で音がしたので、窓を開けると、窓の下にキリストの十字架が見えたのだそうだ。
それをスケッチしたのだが、窓から下に見えたため、上からキリストを見下ろした形になってます。
彼の生涯についてはこちらをどうぞ。
で、今日の本題。
この絵がいかに貧困街を救ったか。
トム・ハニーマン 〜グラスゴー美術館 館長〜
ダリのこの作品は賛否両論あったが、この魅力にいち早く気づいたのがこのトム・ハニーマン。
グラスゴーは造船業によって繁栄したスコットランド最大の都市だったが、一部には社会問題になるほどの貧困街も。
ハニーマンは芸術によってこの街を活気づけたいと思ったのです。
しかし、この絵を買うにあたり、貧しい地域の人からは様々な反対がありました。
絵を買う金があるなら、貧しい人に寄付をしろ、と。
また、この絵の購入に反対したのは貧しい人ばかりではありません。
グラスゴーと言えばプロテスタントの町。
プロテスタントでは偶像崇拝を禁止しているため、公の場にこの絵を展示すれば、敬虔なプロテスタント信者に苦痛とショックを与る、とプロテスタントからも反対されました。
しかしハニーマンは信念を貫きました。
そして、彼の狙い通り、人々はダリのキリストを見るために、こぞってグラスゴーを訪れるようになったのです。
まぁ、本当の豊かさを手に入れるためには、芸術を楽しむことが不可欠ということでしょうか。