別世界と関わった代償 〜「エデンより彼方に」〜

エデンより彼方に [DVD]

※ネタバレ注意。

1950年代のアメリカ、コネチカット州
キャシーは大手企業の重役の夫とかわいい二人の子に囲まれた何不自由ない生活を送っていました。
しかしある日、夫のフランクが同性愛者であることが発覚。
そのことで彼自身も悩んでおり「何としてもこの病気を治す」と言って通院もします。


同性愛が病気て…。
しかもその治療法もミラクル!
ほとんどはカウンセリングらしいのですが、重度の患者には薬物投与や電気ショックを与える方法もあるとか。
いや、50年前のアメリカの医学はよく知らないのですが、これで同性愛が治った人がいるのでしょうか…。


キャシーは上っ面だけの友達は何人もいましたが、本当に心が許せるのは庭師のレイモンドだけ。しかし、彼は黒人。
閉鎖的な町であっという間にキャシーとレイモンドのゴシップが広がります。

最初、レイモンドは気にしないようにいいます。
貧しい生活を送っていたレイモンドは失うものがなかったから、言えたセリフ。
しかしキャシーは失うものがあまりにも多すぎた。豊かな生活、社会的地位…。
キャシーは「うらやましい人…」と言って彼を解雇します。


その間、アルコールにおぼれていた夫は会社から長期休暇を言い渡されます。
いい機会、とばかりにキャシーとフランクはマイアミに旅行にいきます。
しかしここでまたフランクの悪い癖が…。
何と若い男と恋に落ちてしまうのです。

というか、ほとんど一目惚れのような恋だったのですが、よく見抜けたな〜と感心しました。
ぃゃ、相手が同性愛者じゃなかったらとんだ地雷を踏むわけだし(汗。
というか、すごく展開が早い恋でした、ハイ。

キャシーが旅行に行っている間、レイモンドの娘がイジメにあい、怪我をしてしまいます。
それだけではなく、レイモンドの家に黒人から毎日石を投げられるようになります。
理由はレイモンドとキャシーのゴシップ。
レイモンドは街を去らざるを得なくなります。

これが別世界と関わった代償

そしてキャシーも夫から「本当に人を愛してしまった!」と離婚を告げられます。

ハイ、相手はもちろん、マイアイミで会った彼です。

貯金もほとんどなくすべてを失ったキャシーは、最後に列車で旅立つレイモンドを見送ります。




主人公のキャシーは誰からも好かれ、家族に献身的で、リベラルな考えを持った人でした。
ではなぜこんな不幸に見舞われたのか…?

人は修行のために生まれてきたのです。
周囲から愛され、何不自由なく暮らすためではありません。
キャシーの場合はこれまで試練らしい試練がなかったのではないでしょうか。

誰にでも平等に愛情を注ぎ、正しいと思ったら口にし、行動する。

それは人として正しい生き方ではあるけど、世の中には「性善説」なんか軽く覆すくらい悪意に満ちた人がたくさんいます。
正しい生き方かどうかは別として、自分に正直に生きたいと思うなら、強さと知恵としたたかさがなくてはやっていられません。

映画はキャシーがすべてを失うところで終わりますが、今後彼女がそこから這い上がり、周囲の悪意もねじ伏せながら、自分らしく生きることを期待します。