運命に負けず野心を追い続けた女 〜モル・フランダース〜

学生のころ、よく行っていた書店の洋書コーナーに行くと、ひときわ挑戦的な視線を感じた。
視線の主は彼女。
Moll Flanders: The Fortunes and Misfortunes of the Famous Moll Flanders (Penguin Classics)
挑発的な目でこちらを見て、媚びるような笑みを浮かべる彼女の名はモル・フランダース
作者は18世紀イギリスのノン・フィクション作家ダニエル・デフォー。かの有名な「ロビンソン・クルーソー」の作者。
ということは、このモル・フランダースも実在の人物…?
ちょっと立ち読みして…と思ったらいきなりのストーリー展開に目が離せなくなり、気がついたら購入してました。


母親が囚人でモルは刑務所で生まれ。
その後、刑務所で育てるわけにもいかず、お金持ちの養女となり、美しく成長したモルはそこの長男と関係を持つ。
でも長男は結婚が決まり、モルが邪魔になり弟と結婚させる。
その後弟とは離婚し、莫大な手切れ金をもらって、次々と男(時には女も)を変えていくことになるわけだけど、その中でも「彼こそは!」と思った男性もいて結婚するんですが…
子供をもうけた後に、彼の母親の半生を聞き、愕然とします。
実は旦那の母(姑)はかつて囚人で刑務所で女の子を産んだと言うのです。
つまり姑=実の母。
兄弟はまずい。しかも子供もできて…モルは再び離婚することに。
この後、彼女は泥棒に身をやつし、時には体も売り、詐欺まがいのことをし…。

まぁ、数々の悪行を重ねるのですが、すべては贅沢な暮しがしたいため。
彼女にとっては刑務所に入ることなんて怖くなかったんじゃないでしょうか。生まれ故郷みたいなもんだし。
ラストはこんな彼女がハッピー・エンドを迎えるんですよ。

正直、ここまで自分の欲望を包み隠すことなく、まっすぐに進んでいく姿は見ていて気持ちよかったです。
もし現代の女性だったら起業して成功してたんじゃないかな、と思います。
しかし時代は18世紀。
ほんの60年前の20世紀半ばまで、中流以下の女性が大金を手にしたいと思ったらお金持ちの男に寄生するしかなかった時代です。
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ちなみに後で知りましたが、日本語版が出てました。
モル・フランダーズ 上 (岩波文庫 赤 208-3) モル・フランダーズ 下 (岩波文庫 赤 208-4)

あと映画「モル・フランダース」もありますが、もうストーリーが完全に違うものになってます。
一応作者はダニエル・デフォーになってますが。