人肉シチュー 〜ペロプス〜
ちょうどデメテルの娘ペルセフォーネをハデスが誘拐して冥界に立てこもる「乙女座事件」のころ。
リュディアの王タンタロスは自らの息子ペロプスをシチューにし、神々に差し出します。
神々を試すためだったとか、敬意を払いすぎて逆にあだになったとか、専門家の間で意見は分かれています。
とりあえず神々にとってはこれ以上ないくらいの嫌がらせだったみたいで、タンタロスは永遠に飢えと渇きに苦しむ地獄にたたき落とされます。
フランス語の「supplice de Tantale」(欲しいものを見せてじらす)の語源です。
で、神々は「こんなん食えるか――!」
ということで一口も手をつけなかったが、デメテルだけは娘のことを考えてぼーっとしててうっかり食べちゃって
「食べちゃだめだろー!ほら親指貸すから」とか何とか他の神々に言われ、解放される酔っ払いみたいになってます。
で、神様は可哀そうなペロプスのパーツを集め、復元を試みる。
でもデメテルの吐いた肉が見当たらず、「う〜ん、やっぱパーツ足んなくね?」みたいなことに。
しょうがないので、代わりに象牙を使ったそうです。
それ以来、ペロプス及びその子孫は肩の部分が白くなったとか。
ぃゃ、肩が白くなったのは別にいいんだけど…。
ところで誰?
というくらいの美少年になってるんですけど!
たぶん神々の趣味だと思われます。
よみがえったペロプスはオリュンポスで神々にかわいがられながら成長します。
成人して下界に降りたある日、アルカディアの王女ヒッポダメイアに一目惚れ。
お父さんに挨拶に行くペロプス。
でもお父さんも素直には許してくれません。
「戦車で競争して勝ったら、結婚を許してやろう」と言います。
実はお父さんの戦車は戦いの神アレスにもらった馬と武具を付けてるから無敵。
ヒッポダメイアもペロプスに一目惚れだったので、自分に気のある従者をたらしこみます。
ペロプスも従者に「成功したらお前にも領土やるからさー」とか言って、お父さんの戦車の車輪に細工をさせます。
うん、主人公とヒロインとしてどうなんだろう。
当然、お父さんは惨敗し、国を手に入れます。
王様になったペロプスは領土を拡大していきますが、従者との約束をちっとも守りません。
うん、主人公として(以下略)。
まぁこの従者ももともとヒッポダメイアに気があったので、手を出そうとしたりして困った人ですが。
とにかく従者が邪魔になってきたペロプスは、ある日、従者が崖の上から海を見ている時に蹴り落とします。
うん、主人公として(以下略)。
この後、ペロプスの一族は呪われた運命をたどります。
息子たちが王位を争ってタイタス・アンドロニカスばりの骨肉の争いを繰り広げます。
人肉シチューもあるよ。
ソポクレスの悲劇「エレクトラ」もペロプスの子孫です。