通りすがりに殺したい
- 作者: 竹宮恵子
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1984/09
- メディア: 新書
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表紙の男の子の刺すような視線に引きつけられ、さらに「通りすがりに殺したい」というタイトルに惹かれてしまいました。
クレイジーとか殺したいとか、間違いなく病んだ小学生でした。
「地球へ…」でおなじみの竹宮恵子さんの作品です。中学生になって「風と木の詩」を集めたのはまた別のお話w
作品が掲載されたのは…
「姫くずし」昭和52年 ビッグコミックオリジナル増刊号
「新橋の5分間」昭和54年 ジュネ8月号
「ごめんね今夜は」昭和56年 週刊少女コミック8月号
「通りすがりに殺したい」昭和58年 ララ6月号
「ザ・Shy-ing I」昭和59年 ララ8月号
「ザ・Shy-ing II」昭和59年 ララ9月号
主人公の姫川基(通称・姫)17歳は、財界の大物の父と深川の芸者を母に持ち、青山のマンションで一人暮らし。そんな彼のありえない日常を描いた短編集。
彼の性格は以下の通り↓
姫川基は一見して変人である メチャ明るいかとどっぷり暗くて始末に負えない
姫川基は友人を大切にしない と同時に自分をも あまり大切にしない
また「こんな女みたいな男のどこがいいのよ!」という先生に対して
顔がキレイ 女にやさしい 頭がいい
口答えはする アゲ足はとる 反抗的! いいとこ全くありません!!
……でも女は本質的にそういう男が好きでしょ と言ってのけます。
「姫くずし」では、彼の家庭環境について、あれこれ噂する周囲の人間を尻目にこんな言葉を吐き捨てます。
ぼくは関心ないよ 自分の種の出所なんてさ
じゅうぶんさ 自分がここに存在する…それだけで十二分に悲観的かつ楽観的事実だよ
動物だって 植物だってそう いつまでも人間みたいに親に甘ったれてないぜ
当時、私はこのセリフが「かっこいい!!」と思い、「りぼん」の付録についていたノートにメモを取りましたw何のために!?
その後、私は気に入ったセリフがマンガや小説などで出るたびに、メモをとるようになったのですが、これがその第1号だったのは内緒です。
そして「新橋の5分間」。かの有名な「ジュネ」に載ってたやつですw
これは姫とたまたま同じ電車に乗り合わせた刑事が彼の美しさにみとれつい…!?という話です。
ここでも私はまたかっこいいセリフを見つけます。実際にその部分を見ていただきましょうw
よくあることさ 同じ男だもん 体のメカニズムは心得てるよ
…よくあると言ったろ?単にエレクトするくらい…
何だかわからないけれど、エレクトとかメカニズムという言葉がかっこよく見え、どこかで使いたくなってしまいました。というか使いました。スマン…
ある日、友達と遊んでいた時、たまたま近くを歩いていたお兄さんだかおじさんだかに向かって…
アンタ、今アタシを見てエレクトしただろ?
と、あり得ない暴言を吐いてしまいました。
男性はキョト顔をするも、とりあえず猛ダッシュで逃げて行きました。
通りすがりに何言ってんのーーー!?
あやうく見知らぬ男性をロリコン野郎にするところでしたよ(汗)。もう、本当テロですよ。
逃げてくれてありがとう。
一緒にいた友達は、
え?何?エレクトーン…?
と状況を理解していないながらも、たった一言で大の大人が逃げていくような啖呵を切った私を尊敬のまなざしで見てました。
そこで気を良くした私は
男のメカニズムだよ。
と、意味ありげに一言。
本当にあの男性には気の毒な事をしました(;;゚ω゚;;A)
そして本のタイトルにもなった「通りすがりに殺したい」。
これは駅のホームで電車を待つ姫が見知らぬ少年に突き落とされ、死にかける話です。
自殺と勘違いする周囲に、彼はまたしてもカッコいいセリフを吐きます。
…悪いけど 自殺するほど他人に親切じゃないし 世を恨むほど期待もしてない
もちろんメモメモ( ..)φ
姫は警察には犯人を見ていないと言い、独りで犯人を追います。
理由は、なぜ見知らぬ自分を殺そうとしたのかを知りたかったから。以下犯人を追い詰めた時のやり取り。
べつに殺す気なんかない 背中を押したくなっただけだ 何か起こると思って
死のうが死ぬまいがどっちだっていいのさ 俺が押す …そして大騒ぎになる それが見たかっただけ
中略
俺なんか死のうが生きようが奴らにゃ関係ないのさ
たりまえだろうがー
はっきり言って関係ないね
人 殺すまえに死んでほしいだけだ 周りが気に入らないなら 一番早い方法だろ
俺が死んで周囲を喜ばす …それが嫌でなかったら こんなつまらん思いして生きるかよ
そんな生き方じゃメーワクなんだよ メーワク
オケラだって迷路にはまりこんだ仲間を見捨てて逃げるくらいの知恵はあるんだ
中略
もう決まっちまった過去のことなんかウダウダ言ってもはじまらない それともそんな生き方がおもしろいのか
中略
だれだって他人のゴタクをきくほど暇じゃないし 他人に甘えるほど暇でもないんだ
自分のイライラくらい自分で始末するさ!
おもしろいことがないってんなら ぼくがおもしろくしてやろうか?
今度から殺したくなったらぼくを殺せよ
地獄の果てまで相手してやる!
そして独りになって…
おそろしータンカ切っちまった… どっちかってゆーと 忘れてほしい 虫のいい望みってもんだよな
コーカイ先にたたず
どうにでもなれ!
まぁ結局、姫は殺されることなくゲームセットとなるのですが。
…このように姫シリーズ(?)は主人公の姫川基が人の心の闇を見つけ、そこに興味本位で立ち入り、自分が泥をかぶりながら、ちょうどいい着地点に収める…というお話です。
- 作者: 竹宮恵子
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1987/04
- メディア: 新書
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